遠くの光にふれるまで






「なんかわりーっすね、付き合わせちゃって」

 一緒に夜道を歩きながら、とうごくんは申し訳なさそうに言った。

「ううん、楽しかったよ。カレーもおいしかったし。一人暮らしだとにぎやかな時間ってのに縁遠くなっちゃうからね」

 一人っ子だし家庭の事情もあって、食後にわいわい家族団らんってのも遠い昔の話だし。なかなか新鮮で楽しかった。

「……丙さんと、いつから付き合ってるんすか?」

 急な話題変更だった。

「二週間くらい前かな。たまたまあって、意気投合して」

 横断歩道で目が合って……云々の話は、言わないほうがいいだろう。

「あの……こういうこと言うのもあれなんすけど……。大丈夫なんすか?」

 とうごくんの言いたいことは、なんとなく分かる。

 相手は天使。何もかもが違いすぎる。住む世界も、そして寿命も……。

「本当に一生付き合っていくとは思ってないよ。そりゃあわたしだって結婚したいし、子どもほしいし」

「意外と冷静なんすね」

「ひのえさんだって、きっと頭のどこかでは分かってるんじゃないかな。結局はひのえさんより先に死ぬのはわたしなんだし。モテるみたいだし。何年か、何十年か。先のことはまだ分からないけど、別れはいつか必ずくる。そうしてひのえさんも、いつか天使の女の子と、家庭を持つんじゃないかな」

「……」

「ただ、ビビビっときちゃったから、今はもうちょっと、少しでも長く一緒にいたいなとは思う。あ、知ってる? ビビビ。せいこちゃん」

「知ってますけど……。若菜さん、ひとつだけ言わせてください」

「うん?」

「……今の状態では、丙さんと一緒にはいれない。一緒にいるためには、若菜さんが向こうに行かなきゃならない」

「うん、そうだろうね」

「でも気持ちが急ぐあまり、もし万が一……自分で自分の命を絶ったりしたら、天界には絶対に行けない。もっと下の世界に行くことになる。そしたら一緒になるチャンスはほとんどなくなる。だから……」

 とうごくんは立ち止まって、心配そうにわたしを見下ろす。

 とうごくんは優しいね。初めて会ったのは彼がまだ小学生の頃で、驚くほどヤンチャで、悪戯ばっかりして。でも優しい子だって、お姉さんは知っていたよ。

「ありがとうとうごくん、大丈夫だよ。とうごくんが心配するようなことには絶対にならないから」

 ごつごつした彼の手を握って見上げると、安心したようにふっと笑った。