遠くの光にふれるまで






 仕事を終えて篝火家に到着したのは六時近く。
 ちょうどとうごくんの妹のあかりちゃんがキッチンに立っていて「みんなで食べられるようにカレーにしたから、若菜さんも食べて行ってね」と誘ってくれた。
 嬉しいけど、いいのだろうか。いつもいつもご馳走になってしまって。

 ていうか、みんな? みんなとは、篝火先生ととうごくんとあかりちゃんとわたしと……。なんだかもっといるようなニュアンスだったけれど、と少し疑問に思った。

 その疑問の答えはすぐに出た。
 とうごくんの部屋にいたのは、部屋の主に加え、ハナちゃんと春一くん。

 みんな、の意味は分かったけれど、話の内容が読めなくなった。ひのえさんのことで説教されるわけでは、ない……?

「まあ、とにかく座って。ちゃんと話すから」

 とうごくんに促され、わたしはひとつだけ空いた座布団の上に腰を下ろした。



「あのね、若菜さん。若菜さんに霊力があるっていうのはずっと前から気付いてたんだけど」

 そう切り出したのは、ハナちゃんだった。

 とうごくんだけじゃなく、ハナちゃんや春一くんも、所謂見えるひとで。みんなわたしに霊感、というか霊力があることに気付いていたらしい。
 ただ、周りに良からぬ影響を及ぼすわけでもないし、特に気にしていなかったらしいけれど。
 春一くんはつい最近、ハナちゃんは昨日、わたしの霊力がさらに強く、確かなものになっているのに気がついたという。

 霊力は鍛錬や、霊力のある者と関わることによって高まる。
 ご近所さんのとうごくんたちとよく会っていたから、とも思ったけれど、どうもそれだけじゃないらしい。

「理由は多分、ていうか十中八九、丙さんだ」

 とうごくんが静かに、でも呆れたように言った。

 天使部隊の副隊長であるひのえさんの霊力は、並の天使の数倍、数十倍。そんなひとと関わっていたら、影響されるに決まっている。

 霊力が強まると、良からぬものが引き寄せられたり、それに影響されて向こうに引っ張られたりするらしい。
 だからもしかしたら、わたしの周りには今まで以上に霊が溢れるかもしれない。

「そうなったら俺たちもすぐ駆けつけるし、知り合いの天使たちに連絡もするけど、若菜さんも霊力のコントロールを身につけたほうかもいいかもしれない。てのが、若菜さんが来るまでに俺らが話し合った結論なんだけど」

「……、……あれ、それだけ?」

「それだけ、だけど?」

「なんだ、わたしてっきり、ひのえさんのことで説教されるとか、天使と人間なんてうまくいくはずないから別れろって言われるんだと思ってどきどきしちゃった」

 わたしが霊力をコントロールできるようになるかは謎だけれど、それができたら良からぬものから身を守れる可能性が高いというのなら頑張ってみよう。
 そう決意をして、ぐっと拳を握る。と。

「……藤宮さん、ひとつ、聞いていいかな」

「うん? なに、春一くん」

 春一くんは目を伏せ、真面目そうな顔に渋さを滲ませる。

「まさか藤宮さんは、丙さんと……お付き合いをしているのですか?」

「……あれ? とうごくん、話したんじゃ……」

「いや、俺は若菜さんと丙さんが知り合いらしいってことしか」

 気まずそうなとうごくんと春一くんをよそに、ハナちゃんは目をきらきらさせて、わなわな震えながらわたしに飛びついた。



 篝火家で夕飯をご馳走になって、篝火先生に健康診断の話をしたあと帰ろうとしたら、妹のあかりちゃんが「もう帰っちゃうの?」と目を潤ませたから、みんなで一緒に人生ゲームで遊んだ。
 わたしはめちゃくちゃ子宝に恵まれた。