遠くの光にふれるまで






「これは執着の物語だな」


 後日、菓子折りを持って訪れたき組の事務所で、最近の出来事を話すと、藤原さんがそんなことを言った。

「執着の物語、ですか?」

「ああ。まあ、固執でも執心でも拘泥でもいいが」

「大体同じ意味じゃないですか」

「そういうことだ」

「それで、誰がどんな風に執着してるんですか?」

 自分のデスクで話を聞いていた梅田さんが先を促す。
 興味がないのか山口さんはさっきからノートパソコンに向かってソリティアに興じていて、ジョンさんは本を枕代わりにしてデスクでお昼寝中だった。

「登場人物全員執着してるだろ」

 そう言って藤原さんは、その理由を話してくれた。


 藤宮は丙に。そもそも丙と出会わなきゃ天使にならなかった。
 丙は藤宮に。おまえがいなけりゃ降格処分も謹慎もなく、今事は隊長くらいになってただろ。
 たった一ヶ月の付き合いに執着して、十八年も互いを想い続けた。

 現世組は全員藤宮に執着してる。
 篝火と葵は通っていた大学を辞めて医療の道へ。
 山吹は藤宮が働いていた会社に就職。
 篝火の妹はおまえと観に行った剣道を続けた。
 店長とやらは子どもにおまえの名前を付け、野分は病気の子どもたちの支援活動。

 宿木はかつての後悔を引き摺って末端隊士を続け、丙と東屋はそれを気にかけ続けた。


「あー、言われてみれば。みんな藤宮さんから何らかの影響を受けていますね」

 確かに言われてみればそうだ。
 わたしの死が、みんなの人生を変えてしまった。

 十八年前もし何事もなければ、みんな別の人生を歩んでいただろう。

 わたしの寿命は決まったものだったとしても、とうごくんたちと交流していなければ、わたしに霊力がなければ、丙さんと出会わなければ、愛し合わなければ。結末は全て変わっていた。

 なんて。今更「たら」「れば」を言っても無意味なんだろうけど。
 わたしには霊力があった。とうごくんたちと交流し、丙さんと出会い、愛し合った。どれもこれも現実に起こったことだ。