遠くの光にふれるまで





 その向こうに立っていたのは、ショートカットの可愛らしい女性。

 最初笑顔を浮かべていた女性は、ひのえさんを見上げ、わたしを見下ろすと、はっと息を呑んで表情を硬くし「……若菜、さん?」と震えた声を出した。

「ハナちゃん、久しぶりだね」

 十八年経っても、ハナちゃんの可愛さは変わらない。あの頃と同じくりくりした大きい目と小鼻。長かった髪はショートカットになっているけれど、すぐに彼女だと分かる。

「ほんとに、若菜さんなの……?」

 そのくりくりした大きい目をさらに見開き、ハナちゃんが尋ねる。

「本当にわたしだよ。幽霊じゃないからそんなに怯えないで」

「まあ同じようなもんだけどな」

「そりゃあ霊体は霊体ですけど、それを言ったらひのえさんだって同じじゃないですか」

 ひのえさんとわたしのやり取りを黙って聞いていたハナちゃんは、突然わたしに飛びついて、うわーんと大声で泣き出した。

 その声を聞きつけて奥から顔を出したのは、立派な大人の男性になったとうごくんと春一くん。
 ふたりもわたしたちを見てはっとし、そして涙を浮かべながら跳びかかってきたのだった。

 ひのえさんとわたしを囲むように抱きしめ、三人の大人はまるで子どもみたいに泣き喚いていた。

「よしよし、泣かないで、プリン買って来たよ、みんなで食べよう」

 わたしの慰めにひのえさんは「子どもか」と言って笑った。

「つーかおまえら一旦離れろ。花はともかくおっさんふたりに抱きつかれても何にも嬉しくねえ」

 ひのえさんは容赦なく三人を引き剥がし、しっしっと手を上下に振る。その対応に衝撃を受ける三人の顔を見たら、あははと声を上げて笑ってしまった。
 懐かしくて、とても幸せな瞬間だった。


 ただし、次に衝撃を受けるのはわたしの番。

 リビングに通された瞬間、小学校低学年くらいの女の子が「ひのえさーん!」と言って彼に抱きついたのだ。
 ひのえさんも「おう、久しぶりだな」と言って少女を受け止める。

「ひのえさん、やっとミキと結婚してくれる気になったー? 今日はむすめさんをぼくにくださいってパパに言いに来たのー?」

「おい誰だ、こんなこと教えたの」

 大きな衝撃と、小さな嫉妬。
 わたしがいなかった間に、この子とひのえさんに一体何が……?
 再会したばかりで、わたしだってまだ結婚の「け」の字も出ていないのに、この子とは結婚の話……? ずるい!


 そんなわたしの小さな嫉妬に気付いたのか、ひのえさんはふっと笑ってわたしの頭を撫で「妬くな妬くな」と笑った。