えへへ、と、自嘲するような笑みを零して、どこか遠くを見つめたユリ。

その視線の先にはいつだってハヤテくんがいて……彼女と笑い合う、彼の姿があった。

そういうユリのことを、私はユリの言うとおり、すごく健気だとも思っていたし……実際、ユリにそれを伝えたこともあるかもしれない。



「ただ、逃げてただけなの。ハヤテくんには彼女がいるから無理だよ、伝えたって意味ない、どうせフラれるんだから……って。だって、伝えずにいたほうが、自分は傷付かずに済むから」

「……うん」

「でもね、もしも自分がもうすぐ死ぬかもしれないって考えた時に……そうやって逃げてばかりいたら、絶対後悔すると思ったの」



ふわり、と。再び風が吹いて、彼女の長い髪を揺らした。

まるで、空を泳ぐように舞う銀杏の葉。散って、落ちて、枯れゆく葉。

だけどそれは、ただ散っていく葉ではない。枯れ落ちた葉ではない。

精一杯、命を燃やして散ったのだ。

限られた自分の時間を精一杯生きて落ちたのだと……その一枚一枚が、強く、私に語りかける。