「……わからないものはわからないんだから、しょうがないじゃん」



ぽつり、と。

朝露が落ちるように言葉を零した私は、ゆっくりと歩を進めて、屋上を囲む手すりに腕を乗せた。

11月の風は冷たく頬を撫で、ちょうど肩に届くほどの長さの髪を、後ろへ引くように何度も、揺らす。

制服のスカートの裾が棚引いて、まるで、風がこの場所から私を追い出そうとしているみたい。

たった、それだけのこと。だけど今の私には、それだけのことが苦しくて、柄にもなく無償に泣きたくなって、そのまま腕に顔を伏せた。



「……自分の未来が、見えたらいいのに」



零れた言葉は涙の代わり。

そんなこと、絶対に無理だとわかっているけれど。

瞼の裏に映る世界は、いつだって暗闇だから、時々、無性にそんなことを願うんだ。

もしも未来が見えたなら、どんなに楽だろう。

きっと進路表一枚で悩むこともない。

自分の将来に悩んで、担任の先生に怒られて。

11月の寒空の下……こんな風に、打ちひしがれることも、きっと、ない。



「─── 未来、知りたいの?」

「……っ!!」

「どうしても知りたいなら、教えてあげてもいいよ」