「放課後、ついてきてほしいところがあるんだ」



雨先輩に言われて向かった場所は、私にとっても縁(ゆかり)がある場所だった。

【医療センター】そう書かれた門を前に、一瞬躊躇して足を止める。



「美雨? どうしたの?」



目の前にそびえる病院は、私のお母さんが勤めている病院だ。

この辺りでは一番大きな総合病院で、看護師であるお母さんが毎日たくさんの患者さんを前にして、汗を流している現場。

どうして、寄りにもよって、ここに……



「……すみません、なんでもないです。行きましょう」



戸惑いを精一杯押し込めて笑顔を見せれば、一瞬だけ不思議そうに首を傾げた雨先輩。

だけど、それ以上は何も言わずに、病院の敷地内へと歩を進めた。