“さよなら”なんて言わせない。




「ね、ちょ、慧くん、」

「何でこんなにバクバクしてるんだ?それに耳まで真っ赤」

「へっいやそれは!」

「それは?」

「そ、それは…ん゛!」



この体勢のまま彼は細い指で、私の赤い耳をふにふにと触り始めた。

「ん゛」なんて色気のない声が出てしまった。
耳元でクスクス笑ってるのが聞こえる。


うわぁ絶対に馬鹿にしてる。




「ぷっ」

「な、ななな、何笑ってるの!」

「全然変わってないな、千鶴。すぐに顔が赤くなるところ、とかな」




ふっ、と私から離れた慧くん。

至極面白そうにクスクスと笑っている。