“さよなら”なんて言わせない。




まだ五月だから外は真っ暗。
風も冷たくて肌寒い。



「千鶴」



闇に紛れるように彼は居た。

低い声で私の名前を呼ぶ。
その声に少しドキッとして。


待っててくれたの、なんて思ってうれしくなったり。




「慧、くん」

「久しぶりだな」

「う、うん。まさか会うなんて思わなかった!びっくりしちゃった」

「あぁ。偶然だな」




フ、と口角を挙げて薄く笑う慧くん。

その仕草がすごぐ大人っぽくてドキドキしてる。