「あの試合の日、藤山ね、ずっと誰かさんのこと探してたよ」
「そ、そうなの?」
「準決勝までいったけど負けちゃって。相当集中出来なかったみたいだね、誰かさんが帰っちゃったから」
「それは私のせいにしないでよ。れ、練習不足かもしれないじゃんっ」
まぁそれも否定できないけどね、ってクスッと笑って言った一華ちゃん。
「終いには試合終わってから、あまり具合でも悪くなりましたか?って聞きに来たよ」
何よ。一華ちゃん、私のせいで藤山は負けちゃったって言いたいの?
「……喝入れなきゃ」
「お。その様子だと藤山に会いに行きたい感じかな?」
「どこがっ。会ったら覚悟しとけって昨日の電話で言ったの。だから一発」
「あっ、藤山」
え!?慌てて振り返る。
廊下の開いている窓越しにスッと私の前に現れた藤山、本物。まさか、自ら乗り込んでくるような真似をするとは。


