はじまりはミステイク




一礼してから持ち場へ戻り、蹲踞の姿勢を取る2人。私の位置からは圭吾くんは後ろ姿、藤山は正面が見える状態だ。


「始め!」


竹刀を前にして一歩下がり、圭吾くんの動きを読みながら動くして藤山。圭吾くんも藤山の動きに警戒しながら動く。


バシッバシッ!


竹刀が悲鳴を起こす。


その度にビクッとなる私の体。


痛そう……毎回思うこと。


「あの相手の子結構やるね」


「うん。圭吾くんが強いのは知ってるけど、あの子もすごそう」


ほら、藤山。藤山のことも褒めてるよ。


藤山のことも見てるよ。


私だって、見てるよ。


バシッ!


ねぇ、藤山。


なんでかさ、藤山が勝つって思える。


バシッ!


こんなに競り合っていても、こんなに互角だと思っても……藤山は負けない気がする。


それは藤山のため?それとも私のため?


「やぁっ、面!」


先手、圭吾くん。


3本勝負だからあと2回試合がある。


「始め!」


再び開始の合図。両手を祈るように握りしめ、2人の試合を見つめた。