教室に入って通学バックから教科書を取り出して机の中に入れていると、後ろから「武田、おはよう」と男子の声が聞こえた。
振り返るとそこにいたのは、ちょっぴりだけ前髪に寝癖のついた高森君だった。
高森君は私の斜め前の席に座るやいなや、大きなあくびをした。
「眠そうだね」
「んー。昨日あれから結構遅くまで遊んだからな」
「へえ。どこ行ったの?」
「どこって、そんないいとこじゃないよ。男子で大杉ってやつの家に集まって、ずっとゲームしてた」
「男子ってゲーム好きだよね」
「武田は、ゲームする?」
「ううん。私は全く。お兄ちゃんは結構してるみたいだけど」
「そっか。昨日お兄ちゃんいるって言ってたもんな。お兄ちゃん何歳?」
「29歳」
「結構、離れてるんだな。年離れた兄弟っていいよな。仲いいだろ?」
「仲いいけど……どうしてそう思うの」
「俺も姉ちゃんいるんだけどさ、武田の兄ちゃんと同じ年なんだよ。からかわれてる時の方が多いけど、いざって時に色々助けてもらってるから」
「へえ、奇遇だね」
そんな話をしていたら、昨日一緒に遊んだ女子たちが私たちの周りに、にやにやしながら集まってきた。