トンネルの中に入り、一回瞬きをするとトンネルの向こうの景色が見えた。早く行きたくてトンネルの中を走って出た。
トンネルの向こうの景色は、いつもと変わらないような、懐かしいような、そんな景色だった。

「駄菓子屋さん、最近見なくなったな……」

駄菓子屋さんがあった。昔は近所に駄菓子屋さんがあったが、お店をしていたおばあちゃんが辞めてしまった。

古い木造の家に混じってビルが建っている。ここを見ていると今の時代が分からなくなってくる。何故か帰れなくなったらどうしようと考えてしまったが、帰っても退屈で不安な未来しか待っていないと考えると帰りたくなくなった。

少し歩いて、扉が中途半端に開いた家を見つける。泥棒に入られないんだろうか……開いていますよと教えようと思い、外から呼びかけるも返事はない。
失礼かなと思ったが少しだけ中に入った。すると、中途半端に開いた扉からするりと猫が入ってきた。もしも、猫が嫌いな人がいたら、この猫は怒られてしまう!

「あれ、タマ外に出たのかな」

「開けっぱにしてたのか」

「しょうがないな……俺が閉めてやるよ」

部屋から私よりちょっと年上に見える男の子が出てきた。

「あ」

「えっ!?」

男の子は私を見て固まる。そんなことは知らず、猫はおでこをぶつけてきた。