教室を見た感想は過去と未来が混じっている、だった。木造の新しい教室に、見たことも無いような小型の機械。大きな鎌も後ろに置いてあって、ここは何をするところなんだと思った。

「ここでは、それぞれが得意なことを勉強するんだ。例えば海斗は……」

海斗君の方を見ると、ムーンウォークしていた。ダンスが得意らしい。

「明瑠何作ってるんだ?」

洋君が聞くと、明瑠ちゃんは笑顔で猛毒と答えた。そして隊長に、作ったら人に飲まさないように預かると言われていた。

「洋は曲芸とか動物と仲良くなるのが得意なんです。雫は心理学が、晶は意外と料理を作るのが得意です。そして私は……」

そこまで言って、怜君は黒板に何かを書き始める。良く分からない記号と数字を書き連ねている。数学が嫌いな私は見るだけで頭が痛くなっていた。

「基本的になんでも出来ますが、数学が得意です。あなたが得意なことは?」

得意なこと……特に何もない。好きなことはあっても、それ以上に上手い人がいっぱいいて、得意と言っていいのかわからない。

「分からないです……好きなことはありますが……」

「なら、その好きなことを頑張ればいいと思う」

隊長がそう言った。そうか、好きなことなら頑張れる……

「鉛筆と紙……ありますか?紙はティッシュ以外なら何でも!」

それを聞いて、海斗君が紙と2Bの鉛筆を持ってきてくれた。今思い浮かんだ言葉を、集中して書く。

「精神一到……って書いてる!字、綺麗だね!」

「えっあっありがとう」

明瑠ちゃんに褒めてもらえて、ついテンションが上がり机を叩いてしまう。嬉しいことがあるとすぐ何かを叩いてしまうのは私の悪い癖だ。
実は私、書道部だったのだ。字を書くのが好きで、授業や部活以外でも好きな言葉を書いていた。

「書き順、間違っています」

「へ?」

どうやら、到の書き順を間違えていたらしい。私は、書き順と漢字そのものを覚えるのが苦手だ。

「あと字の大きさがバラバラです。今日はそこを直しましょう!」

怜君はそう言って大量の紙を持ってきた。特訓が終わった後の私は、あまりの厳しさに燃え尽きた。