亜希子は剣道部に所属している。
女子の少ない部である。
中の中、悪くはないという程度の見た目である自分でも、部の華として見られるのは、いささか心地よかった。
正座で始まる精神集中から、足運びの練習、素手でのイメージトレーニング、実際の素振り、そして掛かり稽古に入る。
「ィエンッ!!」
部でも副将を務める自分の竹刀が、小気味のよう乾いた音ともに相手の面に入った時、剣道場の戸口が開いた。
入ってきたのは、小柳。彼はその脆弱貧相な性格からは想像しかねる、剣道部顧問である。
いつも、生徒が練習を始めてから少しして現れ、部長に今日のスケジュールなどを聞き、今後の方針を指示――ではなく、提案している。
また、
「おーい先生、今日は叩かれに来たんじゃないんすかー?」
「俺らン相手してくださいよー、ははっ」
などと、男子部員に嘲笑されるのも、いつものことである。
まるで見えない真剣で突き脅されるように、訪れてもすぐ道場から去る小柳を、亜希子はやはり、冷めた目で見ていた。
女子の少ない部である。
中の中、悪くはないという程度の見た目である自分でも、部の華として見られるのは、いささか心地よかった。
正座で始まる精神集中から、足運びの練習、素手でのイメージトレーニング、実際の素振り、そして掛かり稽古に入る。
「ィエンッ!!」
部でも副将を務める自分の竹刀が、小気味のよう乾いた音ともに相手の面に入った時、剣道場の戸口が開いた。
入ってきたのは、小柳。彼はその脆弱貧相な性格からは想像しかねる、剣道部顧問である。
いつも、生徒が練習を始めてから少しして現れ、部長に今日のスケジュールなどを聞き、今後の方針を指示――ではなく、提案している。
また、
「おーい先生、今日は叩かれに来たんじゃないんすかー?」
「俺らン相手してくださいよー、ははっ」
などと、男子部員に嘲笑されるのも、いつものことである。
まるで見えない真剣で突き脅されるように、訪れてもすぐ道場から去る小柳を、亜希子はやはり、冷めた目で見ていた。

