赤き死神は斬撃の歌を纏いて覚醒す





亜希子は、冷めた目でそれを見ていた。

授業中、生徒の質問に満足な返答をできない新米教師・小柳。

彼が、生徒にいびられ、役立たずな教師であることを笑われ、空き缶を投げつけられ、女子にグズ呼ばわりされるのを、亜希子はただ黙して見ていた。

いじめは傍観する者も同罪である――という道徳がある。

しかし、小柳の授業が下手くそであり、生徒への対応も不満足という意味で不良、いびられる理由は仕方なかった。

それに、これはどう考えても、小柳という大人の責任。

無能者がそれを指摘され、しかしなにも対処できないのと同じ。

亜希子は、縮こまり、背を丸めた教師に、小柳という名はあまりに似合いすぎだと、静かに思っていた。



昼休み、食堂の天井角に据え付けられているテレビを見て、亜希子は眉をしかめた。

通り魔事件が、多発しているらしい。

狙われるのは女子高生ばかり。しかも、みな同じ学校。

自分と同じ制服を着ている少女が、感慨薄い写真でテレビに映っているのは、おもしろくない。

聞けば、遺体は首をねじ砕かれたのち、顎が取れるほど口を引き裂かれているらしい。

なおさら、おもしろくない。