地を蹴る固い靴音が、走る少女の焦りを物語っている。

息を切らしながら時おり後ろを振り返り、暗く狭い夜道に、白い穴を開けたように照らされるアスファルトに、追手の影がないかを確認する。

ひとつ、ふたつ、みっつと角を折れて、少女は蹴躓き、倒れた。

チェックのミニスカートから続く黒のストッキングが、転倒の際に膝から破れた。

赤くなった頬を地面に擦り付け、小さな悲鳴を漏らす。痛さより熱さが先に来た。

少女は、しかしすぐに起き上がった。痩せ細り、追い詰められた犬のように、自分が走ってきた夜道を睨む。

十秒。



二十秒。




三十秒。





一分。






闇を見つめていた少女はそこでようやく、自分を追ってきていた影から逃れたことに安堵し、

「んぐぅっ!?」

突然、背後から口を抑えられ、戦慄した。

眼球を固定している神経がキリキリと悲鳴をあげるほど、目だけを動かして見やった背後、

「つぅかまえたぁ」

「んん――っっ!?」

にたりと笑んだ口が、あった。

そして直後、少女の首は、ねじり砕かれた。