目覚まし時計に耳を叩かれ、起き上がった亜希子はひどい汗を掻いていた。

パジャマから下着からなにまで、吸い付くように肌に密着している。

脳裏にこびりついて剥がれない、焦げたような記憶――

小柳……『関口亜希子』……大鎌……斬首……

汗が、記憶と共に、体をじっとり掌握してくる。

あれは夢だろうか?

いや、あまりにも明確な記憶がある。

しかし……最後の最後、自分は、自分に首を落とされたはずである。

恐る恐る触れてみた首は、昨日と変わらず、そこについていた。傷跡すらない。

(やっぱり……夢……?)

なんとも、寝起きの悪い、朝だった。

「亜希子、起きたのー? 早く降りてきなさーい」

目覚ましのベルが止まったのを知ってか、母が催促してくる。

亜希子は、起き上がった。

その時、肩からさらさらとこぼれ落ちた髪が、視界に入る。

その色は、黒ではなく、血の固まったような――

「!?」

亜希子は洗面台へ駆けていき、そして目を見張った。

「ぃ……やああああ――ぁぁあ!?」

鏡の中にいたのは、『関口亜希子』だった。