赤き死神は斬撃の歌を纏いて覚醒す

最短の直線、小柳が地蜘蛛のように飛びかかってくる。

いつ生えたのか、狂気と共に剥き出しされた牙から唾液が散る。

嫌悪に亜希子は顔をしかめたが、『関口亜希子』は、

「はっ」

笑った。

「死神の歌は赤き色――」

笑って、そして、

「血に染め果てる深さゆえ――」

歌った。

「汝のために舞い踊る――」

その歌に呼応し、

「今我が手は断罪を掴まん――」

少女の手には、大振りな鎌が、闇より召喚されていた。

まるで十六分音符のような、二枚刃の大鎌。

それが、

「ぅああああああ――!!」

突進してきた小柳を、あっさり、横断した。

上半身が、下半身が、勢いのままばらばらに飛ばされ抜ける――

かと思ったが、空中で紅蓮の炎に包まれ、燃え、尽きた。

凄惨な、圧倒による、一瞬の交戦。

「地獄で、一生燃えているがいいわ」

皮肉のように言った『関口亜希子』が、そして今度は、亜希子を見下した。

「さあ、準備はいいかしら?」

と、巨大な鎌を小枝のように操り、『関口亜希子』は目を細める。

笑ったのだ。