赤き死神は斬撃の歌を纏いて覚醒す

小柳の舌が胸を、腹を、足を舐めていく。

このまま犯されるのだろうか。

こんな、薄汚い化け物に。

皮膚に粘性を帯びた液体を塗りたくられ、その熱が冷え、乾いていく感触に、総毛立つ。

(死にたい)

願わない願いが、

「死ぬくらいなら」

「!」

「そのからだ、ちょうだい」

聞こえ続けていた歌の、その声の、『主』に拾われた。

直後、

「ははヒギャ!?」

まるで鋼をバカでかい銃弾が貫通したような音をあげ、のし掛かっていた小柳がぶっ飛んだ。

ガガッ、
ギンッ、
ゴンッ、
ゴガガンッ、

と、鉄骨ばかりの空中を飛んだ小柳が、音色をつむぐ。

黒いコートは、見えない地上の闇に落ちていき――

代わりに、小柳に開かされた足の間には、少女がひとり、立っていた。

血染めされたように、赤とも黒ともつかない長髪に、同色の瞳。

精悍な顔立ちに、闇が際立てる白い肌。

身にまとうのは、死装束のような、白の胴着。

「な、あ、ぁ……」

亜希子は、もはや何度目か、呆気に取られた。

そこには、異色の風体に身を飾った『関口亜希子』がいる。