ばかって言う君が好き。


「兄貴もいたらよかったのになー。」
 一番上のお兄さんは都内に出張中のようで、今日は会えない。

「ごちそうさまー!」

「ごちそうさまー!兄ちゃん早く!」

「お前らはいつになっても、子供だなあ。」
 笑いながら、テレビ台の前に移動する直人。

「さて、片付けましょうか。」

「私も手伝います。」

「ありがとう、倫子ちゃん。」
 使った食器を一つ一つ私が洗うと、直人のお母さんがそれをふいてくれる。

テレビ台の前でぎゃーぎゃーと騒ぐ直人達。しているのはサッカーのゲームらしい。

「仲がいいですね、本当に。」

「そうなの。直人は面倒見が良くてね。」
 微笑むお母さん。

「私が言うのもなんだけど、直人優しいでしょう?」

「…とっても優しいです。」
 浮かんでくるのは彼の表情。どれも優しく微笑んだ彼の顔ばかり――怒ったことなんて一度もない。

「あの子は昔から優しい子でね。」
 愛しそうに直人を見つめる。

「でも……優しい子にならざるをえなかったのかもしれないわ。」
 最後のお皿をカタンと置いた。

「一番上のお兄ちゃんは、ある程度大きくなってたからあれなんだけど、直人には弟たちがいたから…。

寂しいなんて言ったことがないのよ、私に。」
 いつも彼が家族の話をする時は、弟君がどうだーとか楽しそうに話すから、そんな風に考えたことがなかった。

むしろ楽しく過ごしてきたんだろうなって―――。


「直人は寂しいってあなたに言う?」

「…はい。」

「そう、ならよかったわ。」
 また微笑んでくれる。
顔だけじゃなくて、直人の優しいところもお母さん譲りなのかもしれないな。

「これからもよろしくね、直人のこと。」
 弟君たちと仲良く遊んでいる直人を一度ちらっと見て、

「……はい。」
 大切にしようと改めて強く思った。


 片付け終わって私は彼の隣に行く。

「片付け、ありがとう。」
 直人の口元が緩んだ。

ずっとこうやって、寂しくても優しく笑ってきたのかもしれない。我慢して、甘えたい気持ちおしこめて……。

今すぐにでも抱きしめたい衝動をこらえながら、私は優しく告げた。

「こちらこそ。」

「……え?何が?」
 直人は理由を尋ねてきたけれど、私は答えないまま彼のひざに手を置いた。