「……ないのね。もうそういうところよ、心配なのは!
直人くん、倫子のことお願いね。」
「はい。」
私をほっといて二人で笑いあっている。なんだかな~と思いつつも、彼の緊張が少しほぐれたみたいでほっとする反面、きっかけが私のことで、ちょっと複雑。
でもやっぱり嬉しいかな。
お母さんと笑いあう直人を見て、そう思った。
「ただいま~。」
玄関から大きな姉の声がした。そうこうしているうちに、買い出しから帰ってきたみたいで、すぐにリビングに入ってきた。
「直人くん、いらっしゃ~い!
あー疲れた。焼肉にしたよ、母さん。」
たったその2分程度の中で、姉の表情はころころと変わる。
「お邪魔してます。」
ぺこっと頭をさげた直人。
「相変わらずだね、怜奈子さん。」
耳元でぼそっと耳打ちしてきた直人に私はつられて笑った。
直人は姉が1回私の家に遊びに来たことがあり、すでに面識があった。同い年ということもあり会話は弾んでいたが、終始姉のペースに巻き込まれていたことも記憶に新しい。
姉がキッチンに食材を置きに行くと、少し遅れて父が入ってきた。
「やあ、直人くん。いらっしゃい!
ビール飲もう!」
部屋に入るや否や、父はおどけた調子で直人に絡んだ。
挨拶しようと立ち上がって身構えた直人も、呆気にとられた表情。
「あ、じゃぁ一緒に飲みましょう。」
あわてて返事した直人に、父はにこにこ笑った。


