仕事帰り、コンビニに寄ってビールとおつまみを買う。
大好きな、するめ。
ちょっと辛めのやつ。
「ありがとうございましたー。」
そう見送られて、明るい店内から街灯ちょっぴりないつもの帰り道へ。
カツカツカツ、ヒールがアスファルトをならす。
夜空を見上げて、雲の隙間からわずかに覗いてる三日月を見ながら、ぷしゅっとビールを開ける。
ごくっ。
一口。
雲にすっかり隠れてしまっている星たちの様子から、明日の天気を予測した。
明日は雨かあ。
そんな風に。
カツカツヒールを響かせる。
ピンポーン
静かな夜道に音が響いた。
たぶん、きっと彼からの連絡。
……うん、やっぱり彼。
『お疲れさま。
ごめん、まだ仕事たてこんでて、今週末も会えそうにない。
9月に入ってどこにも連れていけてなくてごめんな。
また連絡する。』
ぐびっと一口。
ふうっと一息。
「ピンポンパンポーン―――まもなく電車が参ります。」
最寄駅からのかすかなベルが聞こえてくる。
だんだん近づく電車の音。
私の横をガタンガタンと通過する。
「寂しい。」
ガタンガタン―――電車が私の声を隠す。
『お仕事お疲れさま。体調に気を付けてね。
私も仕事頑張ります。
また落ち着いたら、会う約束たてようね。』
携帯を鞄にしまう。
ビール一口。ぐびっ、ふう一息。
私の横をまた電車が、ガタンガタン―――。
彼からの着信を隠して。