ゴーンゴーン
大きな鐘の音がゆっくりと揺れ始めた。

「おめでとーう!」

「おめでとーう!」
 花びらの嵐が、扉から出てきた私たちを迎える。

お父さん、お母さん、お姉ちゃん、健くん。そして、新しい家族として迎えてくれた、お義父さん、お義母さん、お兄さん、弟くんたち。

渡辺先輩、玄野さん、直人の会社の城田君。私と直人の学生時代の友人。たくさんの人が私たちを祝福してくれていた。

「みんなの中通るの恥ずかしいね、直人。」
 ブーケで表情を隠した私。

「……でも?」

「「幸せだね。」」
 顔を見合わせて私たちは笑った。


「お父さん、見て。
倫子あんなに笑っちゃって。」

「ああ、あんだけ降ってたのに、今だけ雨が止んだしなぁ。」

「直人くんも倫子も絶対幸せになるわね。
これだけ、雨が二人の一生分の涙を流してくれたんですもの。」

「本当…倫子は幸せ者だな。」


「写真とりまーす!まず、ご家族の皆さん集まってくださーい!」
 私はドレスを汚してしまわないように、裾に注意を払って中央に寄った。

「大丈夫?」

「ありがと。」
 エスコートしてくれた直人に、私は微笑む。

「兄ちゃん、骨抜きだね。」

「ひゅーひゅー。」

「こら、静かにしなさい、お前らは。すみませんね、倫子さん。」

「いえいんですよ、お兄さん。」
 くすっと私は笑った。

「じゃあそろそろ一枚いきまーすね!」
 カメラマンさんが、右手を高く掲げた。

「大丈夫ですか?いきますよ~!」
 少し位置を皆が確認した後で、

「はーい!」
 みんなが大きく返事した。

「はい、1たす1は~?」
 恒例のセリフ。こういう式でも使われちゃうんだね。

「にい~!」

パシャ
一瞬のまぶしい光で視界が閉ざされる。

「いいですねー!」
 カメラを調節して、次の写真の準備を始めるカメラマンさん。

「俺、今目つむったかも。」

「直人も?私もそんな感じする。」
 ハハハっと笑う私たち。