「偶然さっき会ったの、びっくりさせちゃってごめんね。」

「うん、びっくりした。変わってないね、渡辺先輩。」
 直人の目は、いなくなった先輩の背中を今だ追いかけているようだった。

ともなく歩き出した彼、私もすぐに歩き始める。


でも、様子がおかしい。
どこに次行こうかとか、買いすぎたねとか何か言うはずなのに。何も言わない彼。
 
先輩に会う前は、こんなじゃなかった…よね?
怒ってる……?
 
少し彼の様子が違うように感じて、

「直人?」
 反応をうかがう。

「どうしたの?」
 続けて尋ねようとする前に、

「……リンリン、今日ご飯何する?」 
 意地悪な表情で彼は私を見た。

何か嫌だなって思ったときはこんな表情しないし、私の勘違いだったかな。

「もううるさい。」
 笑ってそう返事した私を見ていつものように笑った彼にやっぱり私の早とちりだ、そう思って、

今日はカレーにしてあげようとその時の私は思うだけだった。