「..え?....」
そのヘラ様の声が聞こえた瞬間。大地を揺らすほどの風が足元からながれてきた。
ヘラ様は目を見開いたまま風になびく私の髪にかすかにふれた。
『…ヘラ..様?』
いつもと様子がちがう。
普段温厚なヘラ様は2つの感情を持った時に表情が変わる。一つ目は怒神。 怒神とか怒り狂った神のことで、これはゼウス様の浮気にたいして持つ感情である。
そしてもう一つはーー悲神。
悲神はヘラ様がとても悲しまれた時、1説として我が子ヘパイストス様の足が不自由でうまれてしまった時になったらしい。


今のヘラ様はきっと..
『何を悲しんでおられるのですか?..』
ヘラ様はハッと我にかえって私を抱きしめた。いつもより強く、痛い抱擁にすこし顔を歪めたその時だった。