ワンリーは助けたい。そのために自分にできることならなんでもしたい。でも、ワンリーじゃない男の妻になるなど……!

(どうしよう。ワンリー様。助けて、ワンリー様)

 なにをどうしていいのか、さっぱりわからなくなって混乱したメイファンは、この場にいないワンリーに胸の内で助けを求める。
 手を差し伸べながら、ガーランがまた一歩近づいた。

「メイファン殿……」

 名前を呼ばれてビクリと体を震わせたメイファンは、ハタと気づいた。途端に頭が冷静さを取り戻す。

 ワンリーがおとなしく処刑されるわけがない。メイファンやガーランが助けなくても、ゆうべのように自分で勝手に逃げ出せるはずだ。
 ゆうべはシェンリュがお咎めを受けることを気にして一緒に逃げるのをためらったけど、シェンリュを縛って庵に残していけば問題ないことにも気付いた。
 シェンリュには申し訳ないけど、縛られていればメイファンが連れ去られたことを無抵抗で見逃したわけでも気付かなかったわけでもないと判断される。今度ワンリーが来たらそうしよう。
 そうと決まったら、悩む必要もない。メイファンはガーランに頭を下げた。

「ごめんなさい。あなたの妻にはなれません。私はワンリー様の妻になると決めているのです」

 ガーランは差し出した手を下げ、冷たく言い放つ。

「お連れの方が処刑されてもいいんですか?」

 メイファンは笑みをたたえて頷いた。

「大丈夫です。そんなことにはなりません。私はワンリー様を信じています」
「よく言った、メイファン」

 突然頭上から声が降ってきた。見上げたメイファンの目の前に庵の天井を突き破って雷(いかずち)が突き刺さる。メイファンが咄嗟に目を閉じて、ふたたび目を開いたときには、目の前にワンリーの背中があった。