自分自身には麒麟は元より、こんな派手な人に会った記憶はない。いったいどういうことなのか気になるが、それより今はこの状況の方が問題だ。

「放して!」

 メイファンは青年の体を突き放し、その腕の中から逃れる。そして反射的に彼の頬を平手で打っていた。

「いきなり無礼です!」

 青年を睨んで怒鳴るメイファンの鼻先に、剣の切っ先が突きつけられる。

「貴様こそ無礼だ、娘」

 ゴクリとつばを飲み込んで剣の元を目でたどると、金色の青年の横に白髪の青年が、青い瞳に怒りを湛えて睨みつけていた。
 この青年も先ほど金の麒麟のそばにいた白い麒麟なのだろう。

「この方はガイアンの守護聖獣たちを統べる王、ワンリー様だ。手を挙げるなど不届き千万!」

 今にも手打ちにしそうな白い青年の腕を押さえて、ワンリーが制する。

「退け、ソミン。俺がうっかりしていた。この娘はなにも覚えていないのだ」

 ワンリーに言われてソミンは剣を収め、頭を下げて一歩退いた。

 ホッとしたものの、ワンリーの言葉が引っかかる。やはりどこかで会ったことがあるのだろうか。それを自分は忘れているということだろうか。