昼食を終えたメイファンは、窓辺のいすに座ってぼんやりと池を眺めた。時々ひざに乗せた本をめくりながらも、ワンリーの取り調べが気になって心はすっかり上の空。

 そろそろなんらかの結論が出ているのではないだろうか。そう考え始めた時、出入り口の扉が叩かれた。シェンリュが応対に出ると、またガーランがやってきたようだ。彼女に席を外すように言って、シェンリュと入れ替わるようにガーランは庵の中に入ってくる。扉を閉めてこちらを向いたガーランは、なにやら深刻な表情をしていた。

 メイファンは咄嗟に席を立つ。イヤな胸騒ぎがして、服の胸元を握りしめた。
 口を開きかけて少しためらったあと、ガーランが絞り出すように言う。

「大変なことになってしまいました」

 うつむいて目を逸らすガーランに、メイファンは恐る恐る尋ねた。

「なにがあったんですか?」

 ガーランは少し間を置いて、声を震わせながら告げる。

「太子様が一向によくならないので、帝のお怒りが一層激しくなってしまって……」

 そこで一旦言葉を切り、ガーランは窺うようにメイファンに視線を向けた。メイファンは黙って先を促す。ガーランは再び目を伏せて一気に続きを吐き出した。

「術者と思われる怪しい者を捕らえたのなら、すぐに処刑せよと」
「そんな!」

 目の前が真っ暗になったような気がして足元がふらつく。よろよろと倒れそうになって、メイファンは窓辺にすがった。

 ついさっきまで、すぐにでも釈放されると浮かれていたのが滑稽に思える。太子様を脅かす者として嫌疑がかけられたのは、そんな簡単に容疑が晴れるようなものではなかったのだ。
 たとえ事実だとしても、こちらの言い分を丸ごと信じてもらえると思っていたのも甘すぎる。
 ワンリーに牢へ戻るように言ったことを、メイファンは激しく後悔した。