食事を終えて、また閑を持て余しているところへ出入り口の扉が叩かれた。対応に出たシェンリュの向こうには、ガーランがいる。シェンリュが脇によけると、ガーランは扉の外に立ったまま笑顔で声をかける。

「メイファン殿、今よろしいですか?」
「はい」
「では少し一緒に外を歩きませんか? 退屈でしょう?」
「……いいんですか?」
「私と一緒なら問題ありません」
「わかりました」

 ガーランは苦手だが特に断る理由もないし、実際に退屈している。それにガーランと話をしたいと思っていたので好都合だ。メイファンは素直に席を立って庵を出た。

「珍しい睡蓮が咲いていたんですよ」

 そう言ってガーランは池の畔にある回廊を進む。
 並んで回廊を歩きながら、ガーランは少し身を屈めてメイファンの顔をのぞき込んだ。

「ゆうべはあまり眠れなかったようですね」
「え?」

 シェンリュからなにか聞いたのだろうか。ゆうべワンリーと会っていたことを気取られたような気がして思わずドキリとする。
 ガーランは苦笑を浮かべてメイファンを指さした。

「目が赤いですよ」
「あ、そうですか?」

 少しホッとしながら目を逸らす。しばらく黙って歩いていると、ガーランがポツリと問いかけた。

「眠れないほど、お連れの方が心配ですか?」
「あ、はい……。心配です」
「そうですか」

 フッとため息をもらすガーランが、なんだか浮かない表情をしているのを不思議に思う。けれどそんなことより、この機会にワンリーの処遇について聞いてみなければ。
 メイファンは意を決して尋ねた。

「あの、私たちの事情について、取り調べの方にはもう伝えていただけたんでしょうか」
「ちゃんと伝えてありますよ。それをどう判断するかは私の預かり知るところではありませんが」

 とりあえずホッとする。ちゃんと伝わったなら、昨日テンセイにきたばかりの人間が、太子様を脅かそうなどとしていないことはわかってもらえるだろう。

「ありがとうございます」
「いえいえ。あなたの心配を和らげることができたなら光栄です」

 深々と頭を下げるメイファンに、ガーランはにっこりと微笑んだ。機嫌がよくなったようなので、ついでにもうひとつ聞いてみる。