いったいどういうことだろう。ガーランの配慮だろうか。言葉を失うメイファンに、シェンリュはニコリともせずに言う。

「なにか思い違いをなさっているのかもしれませんが、私はお客様としてお世話をさせていただきます。遠慮なさらないでください」
「はい」
「では、食事をご用意してよろしいですか?」
「はい。あ、あの……」

 客人としてあまり豪華な食事を用意されても気が引ける。

「あまり食欲がないので、できれば卵粥を……」

 メイファンがおずおずと要求すると、シェンリュは表情も変えずに軽く頭を下げた。

「かしこまりました。他にご要望はございますか?」
「いいえ」
「では、すぐに用意いたします。少しお待ち下さい」

 そう言って鍵もかけずにそそくさと庵を出ていった。相変わらず、とりつく島もない。

 てっきりシェンリュは監視役だと思っていたので拍子抜けする。ガーランもいったいどういうつもりなのか首をひねりたくなる。メイファンが逃げ出したらどうするつもりなのだろう。この様子では、逃げ出してもシェンリュがお咎めを受けることはないような気もする。
 けれど、逃げ出して彼の心証を悪くすると、ワンリーが酷い目に遭うかもしれない。それを見越しての客人扱いなのかもしれない。

 ワンリーがおとなしく酷い目に遭ったりはしないと思うが、しばらく言われたとおりに庵にこもっていることにしよう。それにガーランにはワンリーの処遇について聞かなければならない。ガーランと話せるように、あとでシェンリュに頼んでみよう。

 メイファンはひとつ息をついて、シェンリュの帰りを待った。