ようやく空が白み始めた頃、メイファンは寝台から体を起こした。昨日は色々ありすぎてあまり眠れなかったのだ。
 罪人として捕まってしまったことも、牢に収容されているワンリーが心配なこともあるが、夜の出来事に一番心が囚われて目が冴えてしまった。

 思い出すと今もドキドキが止まらない。
 いつも優しく気遣ってくれるワンリーと一緒にいるうちに、どうやら決意に気持ちが追いついたらしい。ワンリーの妻になることを心から幸せだと思えるようになった。
 ワンリーの思うツボにはまったことは、やっぱり少し悔しいけれど。

 ワンリーはまだ牢の中だし、自分も囚われの身だというのに呑気に頬が緩んでしまう。
 寝台に腰掛けてニヤニヤしながら幸せをかみしめていると、隣の部屋からシェンリュが出てきた。メイファンの姿を見て、驚いたように目を見張る。

「あ、もうお目覚めでしたか」
「えぇ。あまり眠れなくて」
「大丈夫ですか?」
「はい。枕が変わったからだと思います」
「そうですか。では、すぐに朝食をお持ちします」
「ありがとうございます」

 忙しそうに庵を出ていこうとするシェンリュに、メイファンは声をかけた。メイファンの勝手でシェンリュの予想より早く目覚めてしまったのに、予定を急がせてしまうのは申し訳ない。

「あの、ゆっくりでいいです」
「食欲がございませんか?」
「いえ、そうではありませんが、罪人の私にあまり気を遣わないで下さい」
「罪人……?」

 シェンリュが不思議そうに首を傾げる。

「私はメイファン様のことをガーラン様の大切なお客様だと伺っておりますが」
「え……」