地面に座り込んでいたメイファンは、魔獣の脅威が去ったことに安堵して、ゆっくりと立ち上がった。
目の前にいた麒麟が、首を巡らせてこちらを向く。
魔獣を追い払ってくれた聖獣だとはわかっていても、普段目にする馬や牛よりもふた回り以上大きな体はやはり少し怖い。
でもお礼を言わなきゃ! そう思って口を開きかけたとき、麒麟がまばゆい光を発した。
メイファンは咄嗟に目を閉じる。そして光が消えたことを察して目を開くと、そこには見知らぬ青年が立っていた。
おそらく先ほどの麒麟が人に変化したのだろうと推測する。なにしろ胸の前に垂らした髪が、麒麟のたてがみのように金色で、まっすぐにこちらを見つめる瞳も金色なのだ。
聖獣が守護するこの世界ガイアンには、黒髪黒目の人しかいない。少なくともメイファンの知っている世界にはこんな派手な容姿の人はいなかった。
おまけに派手なだけでなく、その顔は見惚れるほどに整っている。
言葉を失うメイファンに、金色の青年は話しかけてきた。
「ケガはないか?」
その声は間違いなく先ほど聞いた麒麟の声と同じだ。メイファンはハッと我に返って答えた。
「あ、はい。大丈夫です」
「そうか、よかった」
青年は嬉しそうに微笑む。そしていきなりメイファンを抱きしめた。
突然のことにメイファンの体は硬直し、頭の中は真っ白になる。青年が耳元でつぶやいた。
「会いたかった。ようやく会えた」
その声にメイファンの頭は思考を取り戻す。
(この人、私を知っているの?)