メイファンは思わず絶句する。いったいどうしたら守護聖獣が人を呪うという話になるのだろう。

「チンロンはテンセイの守護聖獣ですよね? 人を呪うなんてあるんですか?」
「真偽のほどは私にもわかりません。ですが、太子様の頬にくっきりと龍の形をした青い痣が浮き上がっているのです」

 青い龍。まさしくチンロン。

「この痣ができてから、太子様は体調を崩されました。術師はチンロンの呪いだと言っています」
「それで聖獣殿が立ち入り禁止になってるんですか?」
「そうです。というより、立ち入ることができないのです。術師によると、なにか強い力で結界が張られているということです」

 あの黒い幕のようなもののことだろう。ワンリーが呪詛結界だと言っていた。

 だいたいの事情はわかったが、それでどうして自分が投獄されないのかメイファンにはわからない。思い切って聞いてみた。

「あの、それで、どうして私は牢に収容されないんでしょうか?」

 ガーランがにっこり笑ってメイファンを見つめる。

「あなたが愛らしい女性だからです」
「は?」

 こんな時に、からかわれているのだろうか。わかっていてもなんだか照れくさくて顔が熱くなる。それが少し悔しくて、メイファンはムッとしたようにガーランを睨んだ。

「冗談でごまかさないでください」
「冗談ではなくあなたは本当に愛らしい。言われたことはありませんか?」
「……今はどうでもいいことでしょう?」

 ワンリーに言われたことはあるが、無関係な人にわざわざそれを言いたくはない。メイファンは眉を寄せたままガーランから目を背けた。
 ガーランはフッと笑みをこぼして、話を続ける。