広い庭園を巡る回廊をガーランと共に歩きながら、メイファンは密かにあたりを見回した。広い庭園には大きな池があり、白い花弁に薄紅がさした睡蓮の花がいくつも浮かんでいる。きれいに剪定された庭木の葉は陽光に照り映えていた。どう考えても、こんなきれいなところに罪人を収容する牢があるとは思えない。

 ワンリーと別々に収容されて取り調べを受けるのだと思っていたが、あまりに場違いなところにいる気がして、メイファンは落ち着きをなくしていた。ワンリーがどこに連れて行かれたのかも気になる。

 幸いガーランは物静かな人のようで、おまけに権力もあるらしい。先ほど周りにいた怒りっぽい兵士たちよりは話しかけやすい。メイファンはおずおずと問いかけた。

「あの、ワンリー様……私の連れはどこに連れて行かれたんでしょうか」
「罪人を収容する牢です。場所は明かせませんが」

 確かにそうだろう。場所が知りたかったのだが、さすがにそこまで浅はかな人ではないようだ。

「では、私もそこへ収容されるのですか?」

 ため息まじりにメイファンが尋ねると、ガーランはにっこりと微笑んだ。

「いいえ。あなたは収容されません」
「え? なぜですか?」

 面食らって目を見開くメイファンに、ガーランは苦笑まじりに明かす。

「もう市井に色々と噂が広まっているのであまり意味はないんですが、これからお話しすることは、できれば内密にお願いします。実は太子様の容態がよくないんですよ」
「はい。それは耳にしました」
「その原因は聞きましたか?」
「いいえ。聞いてもいいんでしょうか?」
「えぇ。噂になっていますから」
「では、どういう?」
「チンロンの呪いと言われています」
「呪い……」