龍のような頭には一本の角。金の鱗に覆われた馬のような体に金のたてがみ。獅子のように細い尾の先には豊かな金の房毛が揺れていた。
守護聖獣よりももっと人前に現れることのない聖獣の王、麒麟。メイファンも伝説でしか知らない。
金の麒麟のそばには、一回り小さい白い麒麟もいた。
翼のある虎の魔獣は、雷の直撃を逃れて後ろに飛び退いたらしい。先ほどより下がった位置から麒麟たちを睨んでうなっている。
魔獣は金の麒麟に向かってほえるように叫んだ。
「おのれ、ワンリー! また邪魔しにきたのか!」
「人の世界を守護するのが俺の役目だ。人の世を乱すおまえの好きにさせるわけにはいかない」
麒麟は前足の蹄でゆっくりと地面をかきながら頭を低く下げる。その額にある角を雷が取り巻き始めた。角の先端は魔獣の方を指している。
「立ち去れ、チョンジー。そうすれば見逃してやる」
麒麟の威嚇に虎の魔獣チョンジーは、忌々しげに顔をゆがめて空へ舞い上がった。
チョンジーは一声雄叫びをあげて西に飛び去る。その後を追うようにバイフーと対峙していた魔獣たちが一斉に西へ退いていった。
魔獣のいなくなった空には、太陽が徐々に顔を覗かせ始めていた。あたりが次第に明るさを取り戻していく。