そんなメイファンの胸の内をワンリーは知るはずもなく、あたりをキョロキョロと見回す。

「術者はどこだ?」

 メイファンも一緒になってあたりを見回していると、背後から厳しい声が飛んできた。

「そこでなにをしている!」

 思わずビクリと体が震える。どうやら恐れていた事態に直面したらしい。恐る恐る振り向いたメイファンの前には、数人の武装した兵士が鬼の形相で立っていた。
 ビクビクしているメイファンとは対照的に、ワンリーは落ち着いた様子でゆっくりと振り返る。そしてメイファンの手を強く握った。たったそれだけのことで、不安と動揺が静まっていく。状況は全く安心できるものではないのだが。

 兵士のひとりがワンリーに詰め寄る。

「聖獣殿は立ち入り禁止だ。立て札があっただろう」
「気付かなかった」

 ワンリーのあからさまなウソに、兵士は声を荒げた。

「とぼけるな!」

 そして有無も言わさず他の兵士たちに最悪の命令を下す。

「怪しい奴め、ひっ捕らえろ!」
「え? ちょっと……」

 メイファンのわずかな抵抗も虚しく、人と争わないというワンリーは全く抵抗することもなく、あっさりと兵士たちに捕らえられてしまった。