その返事にガーランは思わずため息をもらす。タオティエはなんでも食ってしまう魔獣だ。人も物も大地も空も、目に見えるものすべてと目に見えない人の心までも。けれど放っておくと手当たり次第に食い尽くして自身が破裂してしまうので、それをチョンジーの術が制御している。そのため彼はチョンジーに従順だった。
 太子を食われては困るが、彼の力が必要なのも事実なので、ガーランは一応なだめてみる。

「夢や希望は好きなだけ食っていい」
「そんなキラキラしたもんは胸焼けすんだよ。食った気がしねぇ」
「まぁ待て。じきにワンリーがやってくる。あいつを退けて門の娘を奪えば、人間など食い放題だ」
「いつ?」
「もうすぐだ。すぐそこまで門の波動が近づいている」

 実際に食い放題食われてしまっては、陰の気が得られない。それはタオティエだけでなく魔獣が全滅してしまうので困るが、門の娘をワンリーから奪うまではタオティエに働いてもらわねばならなかった。もうしばらく人の中枢で、緊張感のない配下たちに目を配りながら、チョンジーことガーランの気苦労は絶えそうにない。