夕食を終えて酒を飲みながら少し話をした後、メイファンは床についた。酒が効いたのか、メイファンはぐっすり眠っているようだ。静かな寝息を確認しながら、ワンリーは窓辺にたたずむ。
 雨は夕方には小降りになり、夜も更けた頃すっかり上がってしまった。今は薄い雲の隙間から、時々月が顔を出す。

 その様子を眺めていると、雲の切れ間に赤い光が瞬いた。光はまっすぐにワンリーの元へ飛来する。そして窓の外で止まった。
 ワンリーは薄く窓を開いて、光の玉を部屋に招き入れる。部屋の中に入った光の玉は、見る見る人の姿に変形した。

「エンジュ、テンセイの様子はどうだ?」
「大変なことになっています」
「やはりな。太子が病で帝が混乱していると聞いたが」

 深刻な表情のエンジュに対して、宿の者からある程度話を聞いていたワンリーは、動揺も見せずに淡々と答える。だが、エンジュはさらに続けた。

「それだけではありません」
「まだなにかあるのか?」
「聖獣殿が人によって外から封鎖されています」
「封鎖? チンロンとソンフーはどうした?」
「わかりません。中にいるのだと思いますが、呪詛のようなもので結界が張られていて、私には近づくこともできませんでした。おそらく彼らも出ることができないのだと思います」
「やっかいだな」