メイファンが部屋に戻ると、ワンリーはすでに人の姿に戻って寝台に腰掛けていた。メイファンの姿を認めて、嬉しそうに笑いながら歩み寄ってくる。そしていきなり抱きしめた。
「怖い思いをさせてしまったな。おまえが無事でよかった」
「いいえ。ワンリー様のおかげで助かりました。ありがとうございます」
すぐに放してくれるものと思ったら、ワンリーはしがみつくようにして益々きつく抱きしめる。耳元で少し辛そうな声が告げた。
「この先もおそらく魔獣に出くわしてはおまえに怖い思いをさせると思う」
「大丈夫です。ワンリー様がいてくだされば」
「あぁ。おまえは俺が必ず守る」
今度こそ放してくれるかと思ったが、しばらく待ってもワンリーは離れない。
「あの……ワンリー様、そろそろ放していただけませんか?」
「それはできない」
「え……どうして……」
また”そうしていたいから”とか言うんだろうか。
「湯上がりのおまえは温かくていい匂いだからだ」
そう言ってワンリーは首筋に顔をうずめてくる。予想外の答と首筋に触れる息のくすぐったさに、メイファンはどぎまぎしながら身をよじる。
「ちょっ……! ワンリー様っ……!」
メイファンの抵抗を腕の中に押さえ込んで、ワンリーは囁いた。
「頼む。もう少しだけ、このままでいさせてくれ」
聖獣王に頼まれてはしょうがない。メイファンは抵抗をやめた。
「はい……」
返事をしておずおずとワンリーの背中に腕を回す。ワンリーはクスリと笑い、メイファンの頬に軽く口づけた。



