ホッとして気が抜けたメイファンは、その場にヘナヘナと座り込む。振り向いたワンリーが心配そうに身を屈めてのぞき込んだ。

「大丈夫か? 体が冷えただろう。もう一度湯につかってこい。俺が見張っているから」
「いえ、もう。少し休めば……」
「いいから、すぐにつかれ。目のやり場に困るのだ」
「え……」

 言われて自分の体に目をやる。濡れた薄衣が張り付いて肌が透けて見えていた。
 メイファンは自分の体を抱きしめて湯の中に飛び込む。湯船の縁から顔を出すと、目の前に子犬の笑顔があった。

「この姿の方が緊張しないだろう?」
「はい……」

 確かに中身がワンリーだとわかっていても、子犬の方が不思議なことに緊張しない。しばらく湯船の縁にすがって子犬のワンリーと言葉を交わす。十分に体が温まって頬が火照ってきた頃、メイファンはワンリーの後ろを指さして声を上げた。

「あっ!」
「ん? なんだ?」

 子犬が体ごと振り向いたと同時にメイファンは湯船から勢いよく出て駆け出す。建物の中から顔だけ出してワンリーに告げた。

「先に部屋に戻っていてください。結界はちゃんと解いていってくださいね」
「あぁ、わかった」

 子犬のワンリーは目を細めてしっぽをブンブンと振る。その愛らしさにメイファンは思わずクスリと笑った。