朝日が次第に部屋の中の闇をはらっていく。薄闇の中でメイファンは目覚めた。今日は鶏の声を聞いていない。不思議に思いながら昨日の出来事を思い出した。今日から鶏の世話をしなくてもよかったのだ。

 頭が働き始めたので体を起こそうと片肘をついたところで、横にワンリーが寝そべっているのに気づいて驚く。メイファンと目が合うと、ワンリーはにっこり微笑んだ。

「おはよう」

 平然と挨拶をするワンリーをメイファンは体を起こして冷ややかに見下ろす。

「ワンリー様。添い寝はお断りしたはずですが、いつからそこへいらしたんですか?」
「ついさっきだ。おまえの寝顔がかわいくて、眺めていた。添い寝はしていない。安心しろ」

 そう言ってワンリーは体を起こし、寝台から降りた。
 寝ている姿をそばで見られたくないと言ったのに、いったいなにを安心すればいいのか。だが反論してもまた話がかみ合わないような気がして、メイファンは軽くため息をついた。

 寝顔がかわいいとか言わないでほしい。今さらのように少しドキドキしながらメイファンも寝台を降りる。部屋の中を見回してエンジュがいないことに気づいた。

「エンジュ様は?」
「先に聖獣殿に向かった。聖獣の加護を受けた後は買い物に行こう。次の都テンセイまで三日はかかる。靴や食料、旅支度を整えよう」
「はい」

 商いの都シンシュは夜でもにぎやかで活気にあふれていた。昼間の町並みはどんなに楽しげだろうと思うと気持ちが高揚する。遊びに来ているわけではないとわかっていても、自然にわくわくした。