それは浄財泥棒と同じでは……。でも聖獣様に捧げたものを聖獣様が使うのなら問題ないのだろうか。そんなことを考え込んでいるメイファンの目の前に、先ほど見とれていた肉の串焼きが差し出された。
顔を上げるとにっこりと笑うエンジュと目が合う。
「はい、どうぞ。我々には必要ありませんが、人には休息と食事が必要ですよね。あなたが健康を損ねては大変ですから遠慮なさらないでください」
「あ、ありがとうございます」
せっかく買ってくれたものを、これ以上拒むわけにもいかず、おなかが空いているのも手伝って、メイファンは素直に串焼きを受け取った。
そのまま宿に向かうのかと思えば、ふたりはなぜかメイファンに注目している。もしかして、食べるのを待ってる?
ふたりが見つめる前で、メイファンは串に刺さった肉にパクリとかみつく。久しぶりに食べた肉は新鮮で柔らかく、口の中に広がる肉汁とタレの味に思わず頬がゆるんだ。
「おいしいです」
微笑むメイファンを見てふたりも笑顔になる。
「そうか。よかった」
「食べながらでいいので、宿へ向かいましょう」
「はい」
エンジュに促され、メイファンは串焼きを食べながら再び歩き始めた。
少し歩いてメイファンが串焼きを食べ終わった頃、エンジュは大きな赤い提灯が下がった赤い壁の建物の前で立ち止まった。
「こちらになります」
笑顔で振り向いたエンジュに続いて、宿の入り口を入る。奥から満面の笑顔で女性が駆け寄ってきた。
「まぁ、エンジュ様。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
あまりの大歓迎ぶりにメイファンは面食らってしまう。知り合いなのだろうか。するとエンジュが苦笑しながらこっそり耳打ちした。
「宿代先払いで一番いい部屋を手配してもらったんですよ」
なるほど。金払いのいいお金持ちだと思われているのだろう。