通りの角を曲がって家が見えなくなる。それと同時にメイファンは力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。ワンリーが身を屈めて心配そうに尋ねる。

「どうした?」

 ずっとこらえていた涙がこみ上げてきて、メイファンは小さく嗚咽を漏らした。
 隣にワンリーがしゃがんでメイファンの肩を抱き寄せる。そして頭を撫でながら静かに話しかけた。

「泣くな。おまえは人身御供などではない。おまえがイヤだと言うなら妻にならなくてもいい。それでも俺がおまえを愛していることに変わりはない。だからおまえの両親に恥じぬよう必ずおまえを幸せにする」

 とうとう声を上げて泣き始めたメイファンは、フルフルと頭を振る。
 自分が人身御供だと嘆いているわけでも、麒麟の妻になるのがイヤなわけでもない。ただこんな風に突然両親と別れて二度と会えないのが辛くて悲しかった。
 近所の顔なじみや友人にもなにも告げずに出て行くことになる。両親がうまく話してくれるだろうが、やはり寂しかった。

 ワンリーは黙ったまま、トントンとなだめるように肩をたたいている。その温かい腕に包まれて、メイファンは決意した。
 もう頼れるものはこの方しかいない。こんなに優しくて幸せにすると誓ってくれた方が妻にと望むなら、妻になろう。けれど、気持ちはまだ決意に追いついていなかった。