途方に暮れそうなほど広い、真っ白な部屋でメイファンはひとり所在なげに窓辺にたたずんでいた。
 窓の外は青空の下一面の雲海で、人の世とは隔絶された世界に来てしまったことを思い知らされる。

 シェンザイの頂にある城に来てすぐに、地上の穢れを落とすために、ユエトゥという女性に案内されて風呂に入った。彼女は今後メイファンのお世話をしてくれるらしい。
 今まで出会った人の姿をした聖獣はみんな男性だったので、女性の聖獣はいないのだと思っていた。他にも何人か城の中に女性がいるというので、少しホッとしている。

 風呂の後は薄桃色のゆったりとしたきれいな服に着替えて、今いる真っ白な部屋に通された。ここはメイファンの部屋だというが、あまりに殺風景で広すぎて、落ち着かないのだ。

 体が光っていたのはワンリーが言ったとおりシェンザイに来たら消えていた。
 ぼんやりと窓の外の雲海を眺めていると、扉が叩かれた。控えの間からユエトゥが応対に出る。やってきたのはワンリーだった。
 初めて会ったときと同じ、金の髪と金の瞳に戻っている。金糸の刺繍が施された白い服を着て益々輝いて見えた。
 ワンリーはニコニコ笑いながらメイファンに歩み寄る。

「やはりおまえには、愛らしい色合いの服が似合うな」
「ありがとうございます」

 ワンリーはメイファンの頬に口づけて、手を取った。

「四聖獣が戻ってきた。魔獣の門を閉じるぞ」
「はい」

 ワンリーに手を引かれてメイファンは城の裏側から外に出た。そこは真っ白な大理石が四角く敷き詰められて、中央が円盤状に一段高くなっている。屋根はなく、四隅に白い円柱が立っていた。山頂の端からせり出すように設けられた祭儀場は、まるで雲の上に浮かんでいるようだ。
 中央の祭壇の周りには、ガイアンの各地で出会った四聖獣が待っていた。