なんでもないことのように言われて、一応ホッとする。これで聖獣の加護はすべて受けた。体が光っている以外に特に変わったことはないような気がする。ワンリーたちのように食べない眠らないという以外に何か変わったことがあるのか気になって尋ねてみた。
 ワンリーは苦笑をたたえて答える。

「一番大きな違いは、おまえの姿が人には見えなくなっていることだ。声も聞こえない」
「え?」
「だから人の世界にはいられないんだ」
「そう、なんですか……」

 人とは違う存在になるとはいえ、見た目も中身もなにも変わっていないのに、どうして人の世界にいられないのかようやく理由がわかった。

 うつむくメイファンの頭をワンリーが優しくなでる。

「やはり、人の世界から離れるのはつらいか?」
「はい。寂しいです。でも、ワンリー様がずっと一緒にいてくださるなら大丈夫です」
「そうか」

 メイファンが笑顔で答えると、ワンリーも嬉しそうに笑った。

「よし。シェンザイに戻るぞ」

 ソンフーに四聖獣の引き上げ命令を伝えるように頼んで、ワンリーはメイファンを背負いながら、拝殿の外へ出た。麒麟の姿になったワンリーは一気に空高く舞い上がる。

 目指すはガイアンの中心にそびえ立つ聖なる山シェンザイ。

「速度を上げるぞ。しっかりつかまっていろ」

 そう言ってワンリーは、風のような早さでシェンザイへ向かった。