メイファンは魔獣の倒れていた場所に残されたジャオダンの剣を拾って立ち上がった。そばに落ちていた鞘を拾って収め腰にぶら下げる。メイファンが立ち直ったのを認めて、ワンリーは軽く肩を叩いた。

「聖獣殿に行こう。急がねば。この間来たときよりも陰の気が満ちている。また人に出会っては面倒だから姿を消すぞ」
「はい」

 ふたりが手をつないで歩き始めた途端、霧の中から黒い人影が現れた。それがガーランであることに気づいたときには、メイファンは全身に激しい衝撃を受けて気を失っていた。

「メイファン!」

 ワンリーはあわててメイファンの体を抱き留める。そしてガーランに向かって怒鳴った。

「チョンジー! おまえ、何をした!?」
「眠ってもらっただけだ。また妙な光を使われては困るからな」

 どうやら龍玉から発した光を恐れているようだ。ワンリーはガーランを睨んだまま、メイファンを道端の木にすがらせて、結界で包み込む。ひとまずこれで魔獣はメイファンに手出しできない。
 その様子を見つめながら、ガーランは余裕の笑みを浮かべる。その表情がワンリーの怒りを煽った。

「無駄だ。おまえが消えれば結界も消える。メイファンは私のものになる」
「黙れ! メイファンは渡さぬ。消えるのはおまえの方だ!」

 そう言ってワンリーは右手を天に突き上げた。

「雷聖剣!」
「タオウー!」

 ワンリーが雷聖剣を手にしたと同時に、ガーランの前には怪力の魔獣タオウーが現れる。ワンリーは雷聖剣を両手で握り直して、すぐさまタオウーに向かって振り下ろした。

「邪魔だ、うせろ! 雑魚に用はない!」

 雷聖剣からほとばしり出た虹色の雷(いかずち)がタオウーを頭から真っ二つに切り裂く。構える間もなく不意打ちに遭って、タオウーは声もなくその場にひざをついた。手にした大剣、黒龍剣が音を立てて地面に落ちる。やがてタオウーの体は黒い靄(もや)へと変わり、消えていった。

「バカな……。タオウーが敗れるなど……」

 驚愕の表情で後ずさりするガーランに、ワンリーは剣を振りかざして素早く迫る。