そう言ってジャオダンはお伺いを立てるようにワンリーに視線を送る。ワンリーは静かに問いかけた。

「どうした? おまえの身は俺が守るぞ。おまえが剣を持つ必要はない」
「ありがとうございます。でも私が丸腰でいるより武器を持っている方が、魔獣たちも手を出すのに少しはためらうのではないでしょうか」
「なるほどな」

 納得して頷くと、ワンリーはジャオダンに言う。

「ジャオダン、メイファンに剣を渡してやってくれ」
「かしこまりました」

 ジャオダンが差し出した剣を受け取って、メイファンはそれを腰にさげた。もっと重いのかと思ったら、聖剣は人が作った金属製の剣に比べて驚くほど軽い。
 これならもしも使うことになったとしても、剣の重さに振り回されることもなさそうな気がする。もっとも剣を握ったことのないメイファンにはまともに戦うことなどできないとは思うが。

「よし。そろそろ向かうか。途中までは飛んでいこう。日が暮れるまでにテンセイに着きたい」
「はい」

 空を飛ぶのは苦手だが、一刻も早くテンセイの聖獣殿を解放しなければならないのでしかたない。拝殿を出たワンリーは、すぐにメイファンを背負って麒麟の姿になった。

「では、行ってくる。テンセイみたいに閉じこめられないように注意してくれ」
「わかりました。お気をつけて」

 ジャオダンに別れを告げて、ワンリーは一気に空高く舞い上がる。そしてテンセイに向けて滑るように進み始めた。

 メイファンはワンリーの首に両手でしがみつき、下が見えないようにたてがみに頬を埋める。耳や足に当たる風は冷たいが、体が密着した頬や胸は暖かい。ただそれだけで、ワンリーがそばにいることを実感し安心できた。