メイファンとワンリーがチェンヂュの鍛冶屋に身を寄せて五日が経った。チェンヂュに教えてもらった飯屋の食事もほとんど制覇し、その隣にあるお菓子屋にメイファンの食欲は移動し始める。
 今日も昼食に出て飯屋には寄らずにお菓子屋で桃の形をした練り菓子を買って鍛冶屋に戻った。

 鍛冶屋の入り口を入ろうとしたとき、名前を呼ばれてワンリーは立ち止まる。通りの向こうからジャオダンがブンブンと手を振りながら笑顔で駆け寄ってきた。
 そばまで来たジャオダンは目をキラキラさせながら両の拳を握って報告する。

「お待たせしました、ワンリー様。大成功です。のちほど私の自信作をご覧ください」
「あぁ。チェンヂュに挨拶をしてすぐにでも聖獣殿に向かうとしよう」

 楽しそうに言葉を交わしながら店に入っていくふたりに続きながら、メイファンは少し寂しく感じていた。メイファンがいるからか、毎日やってくるリンユーとはずいぶん仲良くなっていたのだ。挨拶をして出て行くのは、おそらく今生の別れになる。

 そんなことを考えながら店に入ると、リンユーが笑顔で出迎えてくれた。出かけている間に来たのだろう。

「おかえり、メイファン。今日はなにを買ってきたの?」
「桃のお菓子がかわいかったから。はい、お土産」

 毎日なにか食べ物を買って帰るのをリンユーには知られている。袋からふたつ取り出して渡すと、リンユーは嬉しそうに笑った。

「えへへ。ありがとう。実は当てにしてたりして」
「ふふ。知ってる」