「さぁ、納得したならすぐに行こう。ぐずぐずしているヒマはないのだ」
「いや、別に納得していませんから」

 メイファンとワンリーが話のかみ合わない押し問答を続けているところへ、聖獣殿に行っていた両親が戻ってきた。

「メイファン、無事だったの?」
「母さん、父さん」

 助けを求めるようにメイファンが両親を呼ぶ。駆け寄ってきた両親は、メイファンの隣にいるワンリーを訝しげに眺めた。
 娘の腕を掴んだ派手な容姿の見知らぬ青年は、両親にとっては思い切り怪しい奴に違いない。

「この方は?」
「えーと……」

 父の問いかけにメイファンはなんと答えていいかわからず口ごもる。結局適当な説明も思いつかないので、正直に紹介した。

「魔獣の群を追い払ってくれた聖獣王の麒麟さんなの」
「は?」

 ますます怪訝な表情をする両親の目の前で、ワンリーは麒麟の姿に戻って見せる。そしてはるか頭上から挨拶をした。

「はじめまして。ワンリーといいます」
「せ、聖獣王!」
「麒麟さま!」

 両親はワンリーを見上げながら、抱き合うようにして動揺する。
 再び人の姿に戻ったワンリーは、人懐こい笑みを浮かべてなれなれしく両親の手を取った。

「ちょうどよかった、ご両親。俺の妻として娘さんをください」
「えぇっ!? メイファンを!?」
「聖獣王の妻に!?」
「勝手に話を進めないでください!」

 外堀を埋めようとするワンリーにメイファンは怒鳴る。さらに動揺した両親はメイファンに詰め寄った。

「メイファン、おまえいつの間に聖獣王様と知り合いになったの?」
「ついさっき、初めて会ったの! 妻になる気はないから!」